「生態系サービス」、「生物多様性」、「持続可能な開発目標(SDGs)」など、
最近では環境に関する事、生物に関することを耳にする機会が増えてきましたね。
理由としては国際社会全体で危機的意識が強くなってきたことが要因だとされています。
人口も、2023年現在は77億人ですが、2050年には97億人まで増えると言われており、
どのようにして、社会全体として今の生活を維持しながら技術を発展させていくのかが考えられています。
今日はそんな、「生態系サービス」に焦点を絞って見ていきます。
生態系サービスと併せてよく耳にするのが「PES」です。
それについても深堀していきます。
「「生態系サービス」ってよく聞くけど、いまいち分からない」という人は是非参考にしてみてください。
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「生態系サービス」とは
生態系サービスとは、生物や生態系に由来し、人類の利益になる機能のことです。
例えば、森林が酸素を供給したり、水を浄化したり、洪水を防止したりすることなどが生態系サービスにあたります。
生態系サービスは、人間の暮らしや経済活動に欠かせないものであり、その経済的価値は年平均33兆ドルとも見積もられています1。
生態系サービスは、一般的に以下の4つのカテゴリーに分類されます。
供給サービス:食料や水、エネルギー資源などの提供
調整サービス:気候や水質、廃棄物などの制御や調節
文化的サービス:レクリエーションや観光、文化や芸術などの精神的・文化的利益
基盤サービス:栄養循環や土壌形成、送粉や種子散布などの生態系の維持
生態系サービスは、人間の活動によって大きく影響を受けています。
人口増加や開発に伴って、多くの生態系サービスが劣化したり失われたりしています。
これは、人間の生存や福祉にも深刻な影響を及ぼす可能性があります。
そのため、生態系サービスを保全し、持続可能な利用をすることが重要です3。
生態系サービスに関する具体的な事例としては、以下のようなものがあります。
・ニューヨーク市では、飲料水の水質浄化を自然の力で行うことで、水処理施設の建設費用や運営費用を大幅に削減しました。
・アメリカ合衆国では、食糧生産の15~30%がハチによる作物への送粉に依存しています。
・日本では、マングローブ林が海岸線を保護し、魚介類の繁殖場所を提供し、二酸化炭素の吸収や貯留を行うなど、多くの生態系サービスを果たしています。
生態系サービスの4つの分類
生態系サービスの4つのカテゴリーについて詳しく見ていきます。
1.供給サービス
供給サービスとは、生物や生態系に由来し、人類にとって有用な物質や資源を提供する機能のことです。
例えば、食料や水、エネルギー資源、原材料、遺伝資源、薬用資源、観賞資源などが供給サービスにあたります。
供給サービスは、人間の生活や経済活動に直接的に関わるものであり、その価値は比較的容易に評価できる場合が多いです。
しかし、供給サービスを維持するためには、他の生態系サービス(調整サービス、文化的サービス、基盤サービス)も重要な役割を果たしています。
そのため、供給サービスを過度に利用することは、生態系全体のバランスを崩し、長期的には人間の福祉にも悪影響を及ぼす可能性があります。
供給サービスの具体的な事例としては、以下のようなものがあります。
・森林は木材や木質繊維を供給するほか、二酸化炭素を吸収することで気候を調節し、さらには医薬品に使える遺伝子資源を産出します。
・水産養殖は魚類や貝類などの食料を供給するほか、水質浄化や海岸保護などの調整サービスも提供します。
・バイオ燃料はトウモロコシや菜種油などの作物から生成される燃料であり、化石燃料に代わるエネルギー資源として期待されています。
・薬用植物は多くの医薬品や化粧品の原料となります。例えば、アロエは火傷や皮膚炎に効果があるとされています。
・観賞用植物や動物は人間の精神的・文化的利益に寄与します。
例えば、花は美しさや香りで人々を楽しませるだけでなく、愛情や感謝などの感情を伝える手段としても使われます。
2.調整サービス
調整サービスとは、生物や生態系が大気や水、気候、自然災害などの環境要因を制御や調節する機能のことです。
例えば、森林が二酸化炭素を吸収して気候変動を緩和したり、サンゴ礁が海岸線を保護して津波の被害を減らしたりすることなどが調整サービスにあたります。
調整サービスは、人間の健康や安全、生活の質に大きく影響するものであり、その経済的価値は非常に高いと考えられています。
調整サービスは、一般的に以下の7つのカテゴリーに分類されます。
大気質調整:植物が大気中の汚染物質や騒音を除去したり、ヒートアイランド現象を緩和したりすること
気候調整:植物や海洋が二酸化炭素を吸収して温室効果ガスを減らしたり、地球の表面温度を安定させたりすること
局所災害の緩和:森林や湿地帯などが暴風雨や洪水、地滑りなどの自然災害の影響を軽減すること
水量調整:森林や湿地帯などが水の流れや貯留を調節して干ばつや洪水を防止すること
水質浄化:植物や微生物が水中の有害物質や栄養塩類を除去したり分解したりすること
土壌浸食抑制:植物が土壌を固定して土壌流出や地滑りを防止すること
地力維持:植物や微生物が土壌形成や栄養循環を促進して土壌肥沃度を高めること
調整サービスに関する具体的な事例としては、以下のようなものがあります。
・東京都では、都市公園や街路樹などの都市緑化が大気中の粉塵や窒素酸化物などの汚染物質を除去し、年間で約1,000億円相当の経済効果があると推定されています。
・日本では、森林が年間で約3億トンもの二酸化炭素を吸収し、日本全体の排出量(約12億トン)の約25%を相殺しています。
・インドネシアでは、2004年に発生したスマトラ島沖地震に伴う津波で多くの被害が出ましたが、マングローブ林が残っていた地域では被害が軽減されたことが報告されています。
・ニューヨーク市では、飲料水源となるキャッツキル山地周辺の森林や湿地帯を保全することで、水の浄化や貯留を自然の力で行い、水処理施設の建設費用や運営費用を大幅に削減しました。
・日本では、森林が土壌の水分状況を調整し、地滑りや土砂崩れを防止しています。しかし、近年では森林の荒廃や開発によって地滑りの頻度が増加しており、生態系サービスの低下が問題となっています。
・日本では、農地周辺の昆虫などの種の多様性が高いほど、花粉媒介や病害虫の抑制といった調整サービスが向上することが示されています。
3.文化的サービス
文化的サービスとは、生物や生態系が人間の精神的・文化的利益に寄与する機能のことです。
例えば、自然景観の保全、レクリエーションや観光の場と機会、文化、芸術、デザインへのインスピレーション、
神秘的体験、科学や教育に関する知識などが文化的サービスにあたります。
文化的サービスは、人間の暮らしに豊かさや楽しさをもたらし、心身の健康や社会的結束にも貢献するものです。
文化的サービスは、一般的に以下の5つのカテゴリーに分類されます。
自然景観の保全:自然の美しさや多様性を維持すること
レクリエーションや観光の場と機会:自然を楽しむための活動や施設を提供すること
文化、芸術、デザインへのインスピレーション:自然が創造性や表現力を刺激すること
神秘的体験:自然が宗教的・霊的な感動や価値観を形成すること
科学や教育に関する知識:自然が学習や研究の対象や資源となること
文化的サービスに関する具体的な事例としては、以下のようなものがあります。
・日本では、富士山や白山などの名山が国民の心象風景として親しまれており、世界遺産や国立公園に指定されています。
・日本では、登山やキャンプなどのアウトドア活動が人気であり、年間約1億人が森林を訪れています。
・日本では、自然が多くの文化や芸術に影響を与えており、例えば俳句や日本画などでは季節感や自然美が表現されています。
・日本では、神道や仏教などの宗教観に自然崇拝が根付いており、例えば神社や寺院などでは自然物が神聖視されています。
・日本では、自然が科学や教育の分野で重要な役割を果たしており、例えば生物多様性や気候変動などの研究課題があります。
4.基盤サービス
基盤サービスとは、生物や生態系が他の生態系サービス(供給サービス、調整サービス、文化的サービス)を支えるために必要な機能のことです。
例えば、栄養循環や土壌形成、送粉や種子散布などが基盤サービスにあたります。
基盤サービスは、生態系の維持や回復に欠かせないものであり、その経済的価値は計り知れないものです。
基盤サービスは、一般的に以下の4つのカテゴリーに分類されます。
栄養循環:植物や動物、微生物が有機物や無機物を分解したり合成したりすることで、生命活動に必要な栄養素を循環させること
土壌形成:植物や動物、微生物が土壌中の有機物や無機物を分解したり合成したりすることで、土壌の肥沃度や水分保持力を高めること
送粉:昆虫や鳥類などが花粉を運んで植物の受粉を促進すること
種子散布:動物や風などが種子を運んで植物の分布範囲を広げること
基盤サービスに関する具体的な事例としては、以下のようなものがあります。
・日本では、森林が年間で約1,000億トンもの有機物を分解し、土壌中に栄養素を供給しています。
・日本では、森林が年間で約1億トンもの土壌を形成し、土壌流出や地滑りを防止しています。
・日本では、ハチやチョウなどの昆虫が約8,000種もの植物の送粉を行っており、食料作物や果実類などの収量に大きく影響しています。
・日本では、クマやキツネなどの動物が種子を食べて排泄することで、多くの植物の種子散布を行っており、森林の更新や拡大に貢献しています。
PES(Payments for Ecosystem Services)とは
PESとは、生物や生態系に由来し、人類の利益になる機能のことを生態系サービスと呼び、その価値を認めて支払いを行う仕組みのことです。
PESは、生態系サービスの保全や持続的な利用に貢献すると考えられており、世界各地で導入されています。
PESの一般的な特徴は以下のようになります。
自発的な取引:生態系サービスの受益者や利用者が、それらのサービスの管理者や供給者に支払いを行うこと
明確な定義:支払いの対象となる生態系サービスや土地利用がはっきりしていること
条件付き:生態系サービスの供給者がサービスの提供を確保した場合に限り、支払いが行われること
PESの具体的な事例としては、以下のようなものがあります。
・コスタリカでは、森林がもたらす二酸化炭素の吸収や水質浄化などの生態系サービスに対して、政府が環境税や国際援助から得た資金を使って森林所有者に支払いを行っています。
・日本では、水源地域で農業を営む人々が水質保全に貢献するために、水道料金を支払う都市住民や企業から補助金や寄付金を受け取る仕組みがあります。
・メキシコでは、モンテレイ市の水道会社が水源地域で森林保全活動を行う人々に支払いを行っており、これによって水質浄化や洪水防止などの生態系サービスが向上しています。
「生態系サービスとは?「PES」ってなんのこと?」についてのまとめ
生態系サービスとは、生物や生態系の活動から人類が得られている恩恵のことです。
この恩恵は生態系のバランスが保たれているからこそ受けられるものであり、
それをいかに長く持続していくのかが今日問われています。
また、生態系サービスを維持させるためにもお金が必要で、それを「PES」と呼びます。
今日食べたお米は、種が、空気が、光が、水がどのようにめぐってお茶碗の中にあったのかを
考えてみることが「生態系サービスのことを考える」ことの一歩になるかもしれません。
お米だけではなく、様々なことについて生態系サービスからどのような恩恵を得られているのか考えてみると面白いかもしれませんよ。
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